おしゃれも楽しい春がやってきました。コサージュ・ブローチというと、一昔前は入学式でお母さんが胸につけるものという印象でしたが、最近はシンプルな洋服にさりげなくつけているおしゃれな人をよく見かけます。そこで今回は、花びら一枚一枚を染めるところから、手作業でコサージュをつくっている作家工房におじゃましました。
愛知県みよし市の住宅街にあるアトリエ「Liita(リータ)」の柘植晶子さん。服飾系の短大を卒業したあと、結婚・出産を経て、子どもが保育園に入ったころに趣味で小物をつくり始めました。
幼いころ着ていた服は母の手づくりだったという環境で育った柘植さん。「そういえば手づくりするのが好きだった!」と思い出して小物をつくっていたところ、ママ友から「器用そうだからつくって」と頼まれて、コサージュづくりにハマります。黙々と何かをつくっている時間が楽しくて、お店に売っているコサージュを見ては研究し、ほぼ独学でつくり始めました。
柘植さんのアトリエは普段、家族が食事するリビングの机。布から花びらを切り出し、一枚ずつ染め、コテで丸みを出して組み立てます。できた花を組み合わせてコサージュにしたり、染めも一気に染められるものもあれば、何度も色を重ねたり、筆で色をのせたりと、本当に手のかかる作業。主婦、母としての仕事もあるので、1日数時間しか製作できない日もあるとか。「家事の手抜きはプロです!」と笑いながら胸を張る柘植さんですが、夫の理解があり、高校生になった娘も手伝ってくれて、今は自身のウェブサイト(http://www.liita.net/)の他にワークショップを開いたり、セレクトショップでの扱いもあったりと忙しい毎日です。
生花を束ねたコサージュももちろんすてきですが、Liitaの魅力はなんともいえない、くすんだ色味。色や形など、本物の花からインスピレーションを得て、デフォルメしたりイメージを膨らませたりして、自然界にはない、やや朽ちた雰囲気を目指しています。
布を染める染料は、ほんの少量で色が変わってしまうため、理科の実験のように最低2、3種の染料を混ぜて色を出します。染めた瞬間によい色が出ていても、乾くと変化してしまうなど、苦労もあり、面白くもあるそうです。そんな生花にはできない飾り方、染め花だからこそできるオリジナルな世界を追求する柘植さん。ちなみにLiitaには「つなぐ」という意味があるそうです。自然と自分をつなぐ、すてきな名前です。
価格は3,500〜6,000円ほど。ウェディングやコサージュの問い合わせは電話(090-3445-0067)でも。
ふかや・りな 岐阜県多治見市出身、名古屋芸術大学声楽科卒業後、1996年から東海ラジオアナウンサー。毎週月〜金16:00〜17:45に「山浦・深谷のヨヂカラ!」を担当。本コラムをラジオでお届けするコーナー「エコヂカラ」は5月3日(水)17:17ごろからの予定!