「とーふー」というラッパの音や「ロバのパン屋はチンコロリ~ン」など、昔は家の近くまでものを売りに来る移動販売が多くありました。
私が小学生くらいまでは、夕方になると豆腐屋さんのラッパがなったり、夜になるとラーメン屋さんの車が来たりしていましたが、最近は24時間営業、ネットで何でも手に入る時代。近所に店がなくても生活できる時代に、とれたて野菜を車に積んで青空市で売っている「やさいのえん」のお兄さんに出会いました!
その人は小長谷(おばせ)宏さん、31歳。主に知多半島でつくられる野菜や果物を毎朝仕入れては、月火水金曜に名古屋市内各所で販売しています。場所はオーガニックカフェの前やお寺の境内、お肉屋さんの駐車場など。
小長谷さんは大学時代、アジアの貧困問題に興味があり、NGOを立ち上げようと海外で経験を積みました。しかし、海外へ行くことで逆に足元である日本のことが気になりだし、「遠い存在に思えていた日本の農業に携わりたい」「地元で小さな循環をつくることができないか…」と考え始めます。
そんなとき、友人が「野菜の宅配をする会社がある」と教えてくれました。もともとは自家用でつくったものの、食べきれず余った野菜を預かって販売していた「やさい安心くらぶ」。その会社に就職し、経験を積んで2013年からは屋号を「やさいのえん」と変え、青空市を続けています。人と人、人と野菜が「円」のように循環し、その橋渡し役を続けていきたいと付けた名前だそうです。
農家の顔を見て仕入れる野菜たちは、一つひとつに生産者のフルネームがついています。おなじみのナスも、紫色のものから白いもの、大きなもの長いもの…。イチジクなら黒イチジク、白イチジク。他にもハーブやオクラの花など、多種多様です。
9割が無農薬、1割が減農薬の野菜は大きさもいろいろで、少し傷があったり、ふぞろいだったり。でも、あっちを向いたりこっちを向いたり、表情豊かに見えてきます。市場に出せないものも仕入れることで価格を抑えられ、オーガニックだから割高ということはありません。年配の人からは「昔、畑でとって食べた野菜の懐かしい味がする」という声もいただくそうです。青空市に集まるお客さんも「これはどうやって食べるの?」と質問が飛び交い、なんだかワイワイ楽しそう。野菜のほかにお米やたまご、自家製の漬物や味噌も並んでいます。
「命の根幹である食に携われていることが喜びです」と語る小長谷さんは、野菜をつくる人と買う人、両方の顔を見て野菜を運ぶ「縁」結びの役目を担っているともいえます。毎日、知多半島から名古屋まで野菜満載の車を運転するのが唯一の苦労かなーとのことでしたが、たくさんの人が新鮮野菜を待っています。私も愛用してますよ!
問い合わせは電話(080-5100-0534)またはメール(hiroshi.obase@gmail.com)で。
ふかや・りな 岐阜県多治見市出身、名古屋芸術大学声楽科卒業後、1996年から東海ラジオアナウンサーなど。毎週月〜金16:00〜17:45に「山浦・深谷のヨヂカラ!」を担当。本コラムをラジオでお届けするコーナー「エコヂカラ」は11月29日(水)17:17ごろからの予定!