点字新聞がすてきなカード封筒に! 「Join the Dots」ブランド誕生

「点字新聞」をご存知ですか? 目の不自由な方のため、ニュース記事を点字にして発行する新聞なのですが、多くはそのまま廃棄されてしまいます。その古紙を目の不自由な方たち自身の手で再利用して、おしゃれなカード封筒として販売、収益を盲導犬育成事業などにあてる取り組みが名古屋でスタートしました。「Join the Dots(ジョイン・ザ・ドッツ)」--点を線に、線を「笑顔に」広げようというプロジェクトです。

「Join the Dots」プロジェクトをスタートさせた吉井由美子さん。右の点字新聞が左の封筒に
「Join the Dots」プロジェクトをスタートさせた吉井由美子さん。右の点字新聞が左の封筒に

プロジェクトを発案したのは、名古屋を拠点にフェアトレード&エシカルアクセサリーブランド「BASEY(ベイジー)」を展開している吉井由美子さん。1年ほど前、岐阜県の視覚障害者や保護者らでつくる「ひまわりの会」とかかわり、障害者の安定的な雇用の場や、盲導犬を育成する支援の少なさを知った吉井さんは、アクセサリーづくりの経験を生かした新しいビジネスで貢献できないかと考えました。

目をつけたのが点字新聞。真っ白な紙に点字が打ってあるその新聞は、図書館などにも保存されますが、期限が過ぎると廃棄されてしまいます。それを再利用できないかと名古屋市東区のグラフィックデザイナー、山中宗嗣さんらとアイデアを出し合い、点字をデザインの一つに取り入れた封筒と、名刺大のカードを組み合わせたカードセットを商品化することに決めたのです。

点字のドットが模様のように浮かびあがる封筒はきれいで、一つ一つが異なるデザイン
点字のドットが模様のように浮かびあがる封筒はきれいで、一つ一つが異なるデザイン

封筒は一見するとランダムな点が浮かびあがる模様のように見えますが、点字が分かる人にとってはそれぞれに違う「情報」。カードには盲導犬の浮き彫りをあしらい、内紙などは道路の点字ブロックをイメージさせる黄色と、ピンクやブルーなど季節に合わせた計5色を用意することにしました。ブランド名の「Join the Dots」は、点と点を結んで絵を描く子どもの遊びを意味する英語で、「一人一人の優しい気持ちがつながり、笑顔あふれる優しい社会、未来を築けますように」との願いが込められているそうです。

制作は「ひまわりの会」の人たちが1つ1つを手作り。28日には発売を記念するトークイベントが、名古屋市中心部のセレクトショップ「エシカル・ペネロープ TV TOWER」で開かれ、吉井さんや山中さん、そして制作に携わる「ひまわりの会」の藤田亜希さんが、盲導犬「スイフト」とともにプロジェクトの経緯などを語りました。

名古屋市内で開かれた発売記念トークイベントでプロジェクトへの思いなどを語る(右から)グラフィックデザイナーの山中宗嗣さん、吉井さん、ひまわりの会の藤田亜紀さん
名古屋市内で開かれた発売記念トークイベントでプロジェクトへの思いなどを語る(右から)グラフィックデザイナーの山中宗嗣さん、吉井さん、ひまわりの会の藤田亜紀さん

全国には視覚障害者が約31万人いますが、盲導犬は1000頭ほどしかおらず、1頭の育成にも500万円以上の費用がかかるそうです。藤田さんは「私はスイフトがいるので安心して外に出ることができますが、そういう人たちは少ない。仕事は、同じ視覚障害者でもそれぞれに合った作業があるので、一つでも多くの仕事があるとうれしい」とにっこり。

吉井さんは「まだ始まったばかりなので制作が追いつかないことがあるかもしれません。でも、いずれ軌道にのせて商品の種類も増やし、多くの人に障害者や盲導犬のことについて知ってもらいたい」と話していました。

「Join the Dots」のカードセットは税込み248円。「エシカル・ペネロープ TV TOWER」で販売しています。

藤田さんの「体の一部」である盲導犬スイフト。4歳のメスだそうです
藤田さんの「体の一部」である盲導犬スイフト。6歳の女の子だそうです