日差しが強くなってくるこの季節の相棒、帽子。子どものころは無邪気に麦わら帽子をかぶっていても、大人になって「自分は似合わないし…」と敬遠している人も多いのでは? 日焼け対策という実用以外にも、シンプルな服装に帽子ひとつ合わせるだけで格段にスタイルアップするので、私は重宝しています。そして夏も冬もお世話になっているのが「A-Na(アーナ)」の帽子。中島あずささんという女性が京都のアトリエで一人でつくっているんです!
もとは「帽子が似合わない」と思っていた中島さん。東京の文化服装学院スタイリスト科在学中に「自分でつくってみたら似合うかも?」と帽子の授業を選択。もちろん洋服もつくっていましたが、洋服はつくる段階から形の予想がつき、着て動くとそのものの形が変化します。でも、帽子は単体でかぶるため、形も変わらず、頭の上なのでかなり目立ちます。「こんなに思い通りにならないんだ…」という苦手意識が逆に中島さんの心に火をつけました。卒業後は帽子工房で修行を積み、2004年に京都の実家の1階にアトリエを構えて帽子作家の道に入りました。
帽子づくりは「帽体(ぼうたい)」と呼ばれる、ゆるく編まれた帽子の基を仕入れるところからスタート。パナマ、エクアドル、台湾などさまざまな国から集まる帽体は、茶色いものが植物の外側の皮、白いものは中間部をとったもので、特性が異なります。おなじみの麦やラフィア、ココヤシの中心部の繊維であるバオ、ヒノキなどからできているものも。
最初はゆるく編んであるので、これを木型に当てて、のりをつけて形をつくります。植物原料のものはアイロンなどの熱は加えず、のりで湿らせて、ゆっくりと型に合わせて乾燥。編み目をそろえるように手で合わせていくと、美しい形ができてくるそうです。その後、リボンを巻いたり縁をかがったりして出来上がり! 中島さんのつくる帽子は基本、夏も冬もこの手順で、一つ一つがすべて手作業です。
今は植物を早く成長させ、収益を上げるために成長剤を使用している素材が多く、昔に比べると厚みがなく、弱い素材が増えています。中島さんはそこを逆手にとり、薄い素材を2枚重ねて表情を出すなどの手法を試しています。昔なら編み目が細かくて、重ねたら加工できなかったものが、今はできる。変化にめげず、できる中から新しいものを生み出すアイデアです。
帽子というとドレスアップする印象がありますが、種類やサイズは豊富で、中島さんの元には「帽子を買って手持ちの洋服が生き返った」という声も届くそうです。懐かしさと同時に、ファッションシーンにも寄り添い、その人らしさを引き立てられる帽子づくり。「似合わない」と思っているあなたもぜひ、頭にのせてみてくださいね。
アーナの帽子は全国のセレクトショップなどで取り扱い。5月12日(土)から20日(日)まで、千種区猫洞通の「sahan(サハン、TEL 052-783-8200)」で展示即売会が開かれます。京都のアトリエの連絡先は以下。TEL 075-751-7899、メール a-nahatstudio@a-nahat.com
ふかや・りな 岐阜県多治見市出身、名古屋芸術大学声楽科卒業後、1996年から東海ラジオアナウンサーなど。毎週月〜金16:00〜17:45に「山浦・深谷のヨヂカラ!」を担当。本コラムをラジオでお届けするコーナー「エコヂカラ」は2018年5月30日(水)17:17ごろからの予定!