新しい年が始まりました。つい怠惰な日々を過ごしてしまう私にとって、お正月は貴重な切り替えの機会。年始めは、おせち料理のいわれのように「まめに健やかに」過ごせるよう、毎日食べているお米について取り上げます。
愛知県一宮市に「CASA(カーサ)」という“イートインできるお米屋さん”があります。 運営するのは上條嘉久さん、みのりさん夫妻。4人の子どもを育てる私と同級のご夫婦です。
嘉久さんは18歳のときに海外放浪をして、オーストラリアで三重県鈴鹿市の中山篤志さんと出会いました。中山さんは農業を志し、無農薬、無肥料の自然栽培米づくりにチャレンジしていました。帰国後、そのお米のおいしさにほれこんだ嘉久さんは、革製品の会社を立ち上げながら、中山さんの農場「中山農園」のパッケージデザインやネット販売を手伝い始めました。
お米のよさをPRするため、お米に寄り添えば寄り添うほど、農家の抱える問題も知ることになります。日本の主食であるお米が生産調整されていたり、手間をかけて無農薬でつくっても販売する方法がなかったり。そうしたことを伝えるには多くの人に中山農園のお米を食べてもらうしかない、と嘉久さんは2016年にCASAをオープンしたのです。
CASAとはスペイン語やイタリア語で「家」のこと。今はストレス社会で悩みを抱えている人も多い。そんな人も食卓でおいしいものを食べて、おしゃべりすれば心もほぐれていく。かつて悩んで病気になり、心理学を学んだ経験のある嘉久さんだからこそ言える言葉です。
大きな木のテーブルでいただくのは、具だくさんのみそ汁とまん丸の塩にぎり、手づくりのぬかづけや酢大豆のシンプルごはん(800円~)。おにぎりは白米、玄米、酵素玄米が選べます。シンプルなんですが、「ごちそうさま」と共に訪れる不思議な満足&満腹感。お米自体の甘さとかむおいしさで「デザート食べたい」なんて思わないのです!
おにぎりを握るみのりさん、実はごはんが苦手でした(笑)。それが中山農園のお米を食べて、初めて何のおかずもなしに白いごはんがおいしい!と感じたそうです。お米のおいしさやうまみを感じてほしいから、シンプルな塩むすびにしています。店ではお米の他、大豆やみそ、酢も販売。米粉のブラウニーや自家製ジンジャーエールなども楽しめます。つくり方を聞いて自宅でもつくろうという人が多く、みそづくりのワークショップなども開催しています。
便利な世の中だからこそ、まずは家族の食卓。スマホをのぞき込み無言…ではなく、楽しく会話しながら囲むごはんは、想像以上にぜいたくな時間なのかもしれません。
CASA 一宮市開明蒲原89-1、TEL 0586-58-1415
10:00〜19:00(ランチ11:00〜15:00)、土日定休。https://casarice.storeinfo.jp/
ふかや・りな 岐阜県多治見市出身、名古屋芸術大学声楽科卒業後、1996年から東海ラジオアナウンサーなど。毎週月〜金16:00〜17:45に「山浦・深谷のヨヂカラ!」を担当。本連載をまとめた書籍『エコヂカラ!』(桜山社)が好評販売中です!