名古屋に住んで23年、生まれ育った岐阜・多治見で過ごした年数とちょうど半々になった今年。地元の魅力を知人から教えてもらうことが多くなりました。「これではいけない!」と思っていたときに多治見の魅力を再発見したのが、今回ご紹介する「ヒラクビル」です。
JR多治見駅から徒歩5分、駅前の「ながせ商店街」。母に連れられての買い物といえばこの商店街と、隣接するショッピングセンターでした。商店街には親戚の経営する薬局があり、ウサギやカエルのマスコットをかわいがっていた思い出がよみがえります。
しかし、商店街の光が消え、シャッターが閉まる。そんな風景が多治見にも…。
そんな中、市街地の活性化に尽力しているのが「多治見まちづくり株式会社」です。今年設立19期目となるこの会社がしているのは、商店街を魅力的にすること。空き店舗を利用するのにかかる改装費などを同社が肩代わり。要望を反映してリノベーションをした後、借り主から家賃収入を得るという流れです。
新店舗のPRや周辺への影響も調査します。今年3月にオープンしたヒラクビルはもともと「宝石・時計・メガネのワタナベ」でした。2013年に店を閉じるまで、商店街の真ん中で100年の歴史を刻んできたこのビルをなんとか生かそうと、2015年にプロジェクトがスタート。店内には時計や眼鏡のショーケースなどが残されたままで、これを片付けるにもお金がかかる。そこで「お宝探検」と銘打って市民に持ち帰ってもらうなど、さまざまなアイデアで店内をきれいにして今年3月、廃業以前から店頭に飾られていた時計の時刻、午後2時48分に営業を開始しました!
1階と2階には多治見市民の知識の宝庫、駅前にあった書店「東文堂」が。地元にゆかりのある作家や街づくり本、地元の陶芸作家が選書した本が並んでいます。その隣には「喫茶わに」。朝10時から夜9時まで営業していて、夜はお酒も楽しめます。
「わに」の名付け親でもある、まちづくり会社の小口英二さんは「本を片手にゆっくりと過ごす場所をつくりたかった。喫茶メニューも片手に本を携えて食事ができるよう、スープメニューにしたんです」と話してくれました。真ん中の大きな丸テーブルは眼鏡の陳列台だったもの。二階への吹き抜けにはガラスのシャンデリアかと思ったら、大量の眼鏡レンズがつり下げてある! と、元の姿をそこかしこに発見する楽しみもあります。
さらにすごいのが、ゆっくり過ごすためにビルの向かいの駐車場は2時間無料。小口さんが「居座ってもらうことがうれしい」と言うだけあり、大出血サービスです。2階にはソファ席もあり、より静かな空間が。取材当日は女子高生が1人で本を読みふけっているなど、若い人が本と過ごせる場所になっていて、ほほえましかったです。
シェアオフィスやレンタルキッチンも併設。大きな丸テーブルで、本を片手に「輪に」なって過ごすひとときをぜひ! 申し込みは喫茶わに(TEL 080-6956-8271)か、多治見まちづくり株式会社(TEL 0572-23-2636)まで。
深谷さんがパーソナリティーを務める東海ラジオの番組「山浦!深谷!イチヂカラ!」は毎週月〜金の13:00〜16:00オンエア。Risa発行週の火曜日には本連載を紹介する「エコヂカラ!」コーナー(なごや環境大学提供)もあります!