私の地元、岐阜県多治見市は市内各地に窯元があります。笠原ならタイル、市之倉は盃と、それぞれ特色がありますが、中でも高田町では昔から徳利がつくられていました。タヌキが持ってるあの徳利です。1616年に開かれ、昨年400年祭で盛り上がった高田焼きの窯元、「弥満丈欅窯」に伺いました。
現当主は13代目の加藤徹さん。学生時代は現代アートを手がけ、今も工房に作品が飾ってあります。もともと窯焼きの家に生まれ、奥様の生家であるこの弥満丈を引き継ぎました。
江戸時代、酒屋に持ち寄る「通い徳利」で名をはせた高田焼き。時代とともに需要が変化し、昭和には漁業で使う網アシ(魚網につける重り)を生産していました。網アシは漁が終わるとそのまま海に捨てられましたが、それが海の底にかさなって魚のすみかになり、また漁ができました。高田の土は、古代の海藻が土となった珪藻(けいそう)土なので、原料も含めたリサイクルの仕組みだったんです。
そんな高田焼きの通い徳利に、お湯を入れたのがルーツとされる「湯たんぽ」。昔はどこの家庭でも使われていましたが、電化製品の普及とともに廃れていました。しかし、愛・地球博(愛知万博)が開かれた2005年。省エネやリサイクル、エネルギー問題に注目が集まるようになった時代の転機を感じた加藤さんは、昔からある湯たんぽをエコ商品として見直そうと、「湯たんぽ元年」を宣言したのです。
湯たんぽの形は徳利型から、布団の中で転がらないような「かまぼこ型」に変化していきました。それをさらに、高さのあるベッドから落ちないよう、底にドーム状の湾曲を持たせた「動物型(ウサギとハリネズミ)」にも進化させました。また、珪藻土は泥パックや化粧品にも使われる土で、残り湯を洗顔に使うと肌が潤う効果があるとされます。さらに殺菌効果のある酸化チタンも含まれていて、漬物や梅干などの保存食のびんをつくるにはちょうどいい。そんな現代的な機能もアピールし、再び高田焼きの湯たんぽに注目が集まってきました。
「時代が追いついてきたのかな。科学信仰の時代から今、何かがおかしい、自然の持つパワーはすごい!と気づいてきたんじゃないか」と力説する加藤さん。万博以上にエネルギー問題が深刻となった東日本大震災では、東北に1,000個ほどの湯たんぽを提供したそうです。昔から自然と共に暮らしてきた日本。自然に謙虚になること、自分のセンサーを自然に戻すことが大切なのかもしれません。
私も今、足元に「ハリネズミ」を入れて寝ています。電気毛布やシリコンの湯たんぽとは明らかに違い、しっとりとした温かさでじんわ~りと温まります。もちろん朝の洗顔にもお湯を利用していますが、肌に柔らかく感じます。
人気が高まっても、弥満丈の湯たんぽは夫婦2人の手づくり。大量生産にはない、ひなたぼっこのような温かさを感じることができるはずです! かまぼこ型は3,240円、動物型は3,780円(税込み)。TEL 0572-22-1679
ふかや・りな 岐阜県多治見市出身、名古屋芸術大学声楽科卒業後、1996年から東海ラジオアナウンサー。毎週月〜金16:00〜17:45に「山浦・深谷のヨヂカラ!」を担当。本コラムをラジオでお届けするコーナー「エコヂカラ」は2月1日(水)17:17ごろからの予定!