深谷里奈のエコヂカラ!【第36回】「丁寧なくらし」映す場所

以前、このコーナーでアンティーク着物の「今日実」を紹介しました(2016年11月号)。その今日実さんが新しい「場所」をオープンさせました。お店ではなく、場所。中区・橘にできた、その名も「おかしばこ」です!

「貸す場所」から付けた名前。実は先月、私が体験したキャンドル教室の会場となったのがこちら。他にも着付けや書道、茶道、季節のしつらえについての教室を開いたり、写真スタジオとして使用したりもできます。このあたりは古い家並みが残っていて、近くに東別院や日置神社などがあるため、着物を着てロケに出ることも多いそうです。

「おかしばこ」で写真撮影する家族。ひなまつりにも最適!

今日実さんがアンティーク着物の販売やレンタル以外に、この場所をつくろうと思ったのにはわけがあります。

実は、若くして母親を亡くされているため、季節の行事やマナー、しつらえを身近に教えてくれる人がいませんでした。もし母親が健在でも、親自身が若く、ならわしを伝えられていない人も少なくありません。このままでは日本人として何も知らない人間になってしまう…。そんな危機感を持っているのは自分ひとりでないことを知り、気軽に習える場所をつくろうと思い立ったのです。

今、「丁寧なくらし」が流行語のように多用されますが、今日実さんが考えるそれは、高価でよいものを取り入れることではありません。「普段の生活の中で何気なく過ぎていく行事の意味を考えたり、文字を書くとき、一文字に時間をかけて丁寧に書いてみたり。仕事や家事で忙しすぎて『やっつけ』になってしまっているのを丁寧にやり直すこと」だと話してくれました。

撮影スタジオとして使う場合は、プロのカメラマンを依頼することもできます。でも、今は自分たちでスマホを使って気軽に撮影、アプリで加工してプロ顔負けの写真集をつくる人も。実は、よい表情って家族が一番上手に撮れたりするんですよね。家族水入らずのリラックスした状態でふとした表情を捉えたり、スマホに慣れているイマドキの子どものほうが上手に撮ったり。家族しか知らないリラックスした顔を写真に残せたら…そんな時間をおかしばこで過ごしてほしいと、今日実さんの夢は広がります。

おかしばこの中は、夫のハビエルさん(ペルー人)と手づくりしたかわいい空間です。南からの明るい光に包まれた部屋。庭での撮影もOK。もちろん、本物の着物のよさを知ってほしいから、着付けもしていますよ。

基本使用料は1グループで1時間3,000円、2時間5,000円(着物レンタル、カメラマン依頼、周辺でのロケ撮影などは別料金)。市営地下鉄「上前津」駅6番出口から南へ徒歩6分、橘小学校の隣。問い合わせは電話(052-242-3478)で。

気さくなオーナーの今日実さん(右)

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fukaya_profileふかや・りな 岐阜県多治見市出身、名古屋芸術大学声楽科卒業後、1996年から東海ラジオアナウンサーなど。毎週月〜金16:00〜17:45に「山浦・深谷のヨヂカラ!」を担当。本コラムをラジオでお届けするコーナー「エコヂカラ」は2018年4月4日(水)17:17ごろからの予定!