【第10回】新芽とかやくご飯
だし好きの私は、かやくご飯も大好きで、子どものころ、普段より2杯は多く食べていた。
家のごはんも好きだけど、そのころ私にはものすごく美味しいと感じる「かやくご飯」があった。
高辻の交差点に大きなダイエーがあったころ。
近所にはまだ商店街や文房具屋さん、おもちゃ屋さんが立ち並んでいた。
ほとんどのものはそろうのだけれど、すべてがそろうわけではない。
だから、我が家でそこへ行くときは、遊びにというよりも何か大事なものを買わなければいけないから行く、そんな場所だった。
特別な買い物は、ひと仕事だった。
特に私みたいなのが一緒だと大変だったことだろう。
買ってもらえないと床にころがるのだから。
買い物が終わると、みんなでご飯を食べに行った。
2階には本屋さんがあり、その奥まった場所に小さなうどん屋さんがあった。
そこに、そのかやくご飯はあった。
黒塗りのおわんに小さく刻まれたニンジンやコンニャク、鶏肉が入ったかやくご飯。
今思えば、きっと父か母が食べるうどんに付けてくれていたのだろう。
あるとき、店に入ってから両親が「変ったのかな?」と言った。
小さい私にはその違いはわからなかった。
でもかやくご飯があったから、きっと両親は、「これで下の娘の機嫌が悪くならずにすむ」とほっとしたことだろう。
でも、なんか味が違う。
不満げな私の様子を察知した母は、「同じでしょ」と機嫌をとった。
だが、何かごまかされているようで「ちがう」とつぶやいた。
父は「だしの味が違うのかな。」と言った。
小さいころは、ずっとあると思っていたダイエーも、今では違うショッピングセンターに変ってしまった。
いろんなことが変っても味にうるさく、うらみがましいところだけはなかなか変わらない。
そして、やっぱり春には春の味!
新芽には身体を目覚めさせる力があるそうです。
一説によると冬眠後、動物が巣から出て、真っ先にするのは新芽を食べることだとか。
人も動物。
だから冬は、どうしてもため込みやすい。
春、衣替えと一緒に新芽を食べて、体の中から春物に衣替えをしませんか?
国際中医薬膳師 ・森田恵理歌
春は冬の邪気の体内に溜まった内熱をとるため解毒作用のある、ほろ苦いタラの芽やフキノトウ、タケノコ、菜の花を食べます。クマもそうですね。新芽(スプラウト)、特にブロッコリースプラウトには、 抗酸化作用(アンチエイジング)や肝臓の解毒作用を高める作用があります。
【わらびのかやくご飯】
★米 ・・・3合
★だし ・・・3カップ
★塩・しょうゆ・・・各小さじ1杯
★酒 ・・・大さじ3杯
★ワラビ・・・1把
★ニンジン ・・・半分
★コンニャク・・・半分
★干しシイタケ・・・5枚
★鶏肉 ・・・100g
①ワラビに重層をふり、たっぷりの熱湯をかけます。冷めるまでそのままにします。
②ニンジン、コンニャク、もどした干しシイタケを細かく刻みます。
③材料を合わせ、ごはんを炊きます。
④炊きあがったら、刻んだワラビを混ぜます。
河野香織(かわの・かおり)
国際自然保護連合日本委員会・想いでつなごう!おりがみアクション事務局
日本の伝統文化「おりがみ」を通じ、「愛知ターゲット」と「生物多様性」の大切さを伝え、子どもたちに環境について考えるきっかけづくりをしています。