毎日毎日お世話になっているのに、意識するのは月に一度、ポストに検針票が入っているときだけ…といえば? 水、ガス、電気! その水道やガスの使用量をはかるメーター。
正直、引っ越しのときくらいしかふたを開けたこともありませんでした。
熱田区千年地区にある「愛知時計電機」。「時計」と名はつきますが、今は水道やガスメーターの全国トップシェアを誇る会社です。どういうことでしょう?
1898(明治31)年、名古屋城築城のための木材集積地だった堀川沿いに創業。木材が豊富で、徳川家お抱えの時計師がいたという地の利を生かして柱時計の製造を始めました。
木肌のつやが美しい柱時計。早稲田大学の大隈記念講堂の機械装置や、若宮大通の三英傑からくり時計も同社の製作です。本社の玄関ホールには大きな時計があり、取材にうかがった日もボーンボーンと時を知らせていました。
戦時中はその精密技術で通信機や軍用機を製造。木材を張り合わせ、強度を増す「大きなものを木でつくる」技術を応用して機体やプロペラもつくりました。ハワイでは当時の艦上爆撃機が「アイチボンバー」として展示してあるそうです。このころの木を接着する技術が今のアイカ工業に、エンジンは愛知機械工業、そして歯車の技術が愛知時計電機に受け継がれている、というわけ。熱田区千年は日本の技術の原点の地なんですね。
それから70年余り。「昔は時を計り、今は液体や気体を量っています。どちらも歯車で『はかる』という意味では同じです」と経営企画室の田中豊さん。時計から戦闘機、メーターと、時代に合わせて変化してきたんですね。
時代といえば今は環境の時代。家庭用水道メーターは8年、ガスメーターは10年で交換しますが、回収したメーターは分解・清掃の後、中のコンピュータを交換したり、検査を繰り返したりして、ほとんどの部品をリユースしているそうです。特にガスは主に朝晩しか使われず、傷みも少ないため、再使用可能なガスメーターは99%! 新品の部材の90%をリユースして、再び私たちの元にやってきます。そして定期点検を繰り返し、リユースされてさらに50年働き、一部は廃棄されますが、外枠は溶かしてまた新品に生まれ変わるのです。
昨年、完成した新社屋も環境をうまく取り入れた建物で、名古屋市の「まちなみデザイン貢献賞」を受賞しています。ガラス張りで自然光を取り入れ、社屋の真ん中に自然の光と風を取り入れる吹き抜けを設置。堀川沿いの環境を生かして、周囲に溶け込んだ社屋にも「エコヂカラ」を感じました。
普段は扉の中に隠されているメーターですが、電磁式や超音波技術を取り入れ、消費電力が従来の1万分の1に抑えられたエコなものに進化していたり、スペースをとらないようコンパクトになったりしているそうです。毎日休まず働いているメーター君は100年以上の歴史に支えられ、エコな時を刻んでいるんですね。
ふかや・りな 岐阜県多治見市出身、名古屋芸術大学声楽科卒業後、1996年から東海ラジオアナウンサー。毎週月〜金16:00〜17:45に「山浦・深谷のヨヂカラ!」を担当。本コラムをラジオでお届けするコーナー「エコヂカラ」は6月1日(水)17:17ごろからの予定!
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