甘い香りとちょっと切ない思い出、かおりんの連載コラム第19回

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【第19回】タケノコとおばあちゃん

私には祖母が二人いて、一人は折り紙を教えてくれた淡路島のおばあちゃん。

そしてもう一人は姫路のおばあちゃんだった。

母方にあたる姫路の親戚は、なぜか全員とても言葉がきつく、それは関西という土地柄によるものか、もともとの気質によるものか私には区別がつかなかったけれど、彼らが5家族も集まれば喧々諤々(けんけんがくがく)、とにかく騒がしい。後々それは播州弁(ばんしゅうべん)特有のなまりと知るのだが、その影響をもろに受けた私は小学校低学年のころかなりなまっており、転校生でもないのに「何それ」と言われ苦労した。

大正生まれのおばあちゃんは、今よりずっと家というものや長男に対する意識が強かったのだろう。とにかく私よりお兄ちゃんばかりをかわいがる。

私はそれを見て「おばあちゃんは、お兄ちゃんだけ特別なんだ」と感じたし、孫にはもっと小さい子や芸のある子もいたものだから、おばあちゃんに特別扱いされない私はよくむくれていた。

要はたった一人の孫でありたかったのだろう。

何十人もいる親戚の中心にいるゴットマザーというのが、私の中にある祖母の印象で、そんな祖母の家はいつもにぎやかだった。

毎年、波の出るプールと花火が恒例行事。そしてお兄ちゃんが連れて行ってくれる映画はジャッキー・チェンやマクロス、ガンダムといった男の子仕様だったし、近くの駄菓子屋には「さくらもち」という本家本元とは似ても似つかぬお菓子を売っていた。

名古屋でも売っていないわけではないのだろうけれど、ねちねちしたそれを食べながらビニール風船をぷうっと膨らませるのが私のお気に入りであった。

ビニール風船とは、チューブに独特の香りのするボンドのような粘着物が入っており、それを丸めては付属するストローの先に付け、割らないようにふくらます遊びである。

減らないようにちょっとづつ、でも揮発すると上手くふくらまなくなってしまうので、私は当時この遊びにかなりはまっていた。

それから夜は、子ども同士でトランプ。

難しいルールが必要なゲームは、とてもお兄ちゃんに勝てないけれど、どうしてか私はカード運が良くて、大富豪では一番になった。(今でもカード運は強い)

寝るのは急な階段を上った二階の客間で、そこには市松人形がある。

みんな、その人形をすごく恐がっていた。

けど、楽しかったことこの上ない。

父の休みは長く、我が家が一番乗りしたときは、「早くだれか来ないかな」と思ったものだし、いとこを送り出すときは、寂しくて泣きそうになった。

そんな楽しい祖母の家も、私が小学校高学年ぐらいになると皆それぞれに忙しくなり、肝心のお兄ちゃんたちは遅れて来るようになり、来てもすぐ帰ってしまった。

でもこんなに楽しいのだから、その大変なことが終わったら、また前のように集まれるのだろうと、当時の私は思っていた。

私が中学生ぐらいになると、お盆に一日二日集まるだけになり、いつのまにか行ったり行かなくなったり、以前のようにみんなでわいわい食事をとることもなくなった。

そしてそのころからだんだんと、我が家では家族4人で出けるようになっていった。

春になると祖母はタケノコ、アナゴ、キビナゴといった姫路の特産品、そして銘菓「玉椿」を送ってくれた。

私はどれも大好きで、春の一時期に、それも祖母が送ってくれたタケノコが一番好きだった。

「来年は、できないかも」と母づてに祖母の言葉を聞いても「どうして?」と言ったりしていたが、私が中学生ぐらいまで、祖母はタケノコを送ってくれた。

結婚し、自分でタケノコを湯がくようになり、こんなに手間のかかる食べ物だったのかとようやく知る。

そういえば玉椿は、さくらもちによく似ている。

会えばお兄ちゃんの自慢ばかりする祖母は、口は悪いけれど、もしかすると私はかわいがられていたのかもしれない。

19.たけのこ

【若竹煮(わかたけに)】

若竹煮は、日本の煮物料理のひとつで、春に収穫される新タケノコと新ワカメを使うため「春先の出会い物」と言われています。

★タケノコ・・・小5~6本

★ぬか・・・       大さじ5程度

★タカノツメ・・・     1本

★フキ・・・       1束

★塩蔵ワカメ・・・80g

★かつおだし・・・500cc

★酒      ・・・大さじ1~2杯

★塩      ・・・小さじ1/2

★しょうゆ    ・・・大さじ1

★みりん・・・大さじ1

  • タケノコをぬかとタカノツメとともに1~2時間ゆで、汁のまま一晩置きます。
  • フキの皮をむき、熱湯で2~3分、色よく湯がきます。
  • タケノコを一口大に切り、だし、しょうゆ、みりん、酒、塩などとともに、ことこと20~30分煮ます。
  • 一口大に切ったワカメとフキを加え、強火で5分ほど煮ます。
  • 器に、タケノコとワカメを盛りつけ、煮汁をはり、フキを添えます。
  • 仕上げに木の芽を添えます。

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河野香織(かわの・かおり)

国際自然保護連合日本委員会・想いでつなごう!おりがみアクション事務局

日本の伝統文化「おりがみ」を通じ、「愛知ターゲット」と「生物多様性」の大切さを伝え、子どもたちに環境について考えるきっかけづくりをしています。

【第1回】母の鳥そぼろご飯

【第2回】おにぎり弁当とECO容器

【第3回】おばあちゃんの焼き芋

【第4回】煮物の味は人生の味

【第5回】苺パフェと大人の時間

【第6回】息子の寝言にそばを焼く

【第7回】父のぞうすいは誰のため?

【第8回】おやつの時間と息子の成長

【第9回】ミツバのおじいちゃん

【第10回】新芽とかやくご飯

【第11回】音楽は記憶のタイムカプセル

【第12回】筍は祖母の便り

【第13回】おばけと冷たいお菓子

【第14〜15回】夏のチキンライスとラタトゥイユ

【第16回】金木犀の香りと甘々カボチャ

【第17回】月がついてくる

【第18回】祖母の着物、母の着物